・自費出版のいろいろな呼び方
・商業出版と自費出版は「費用を負担する人」が違う
・その他のわかりづらい出版方式
・印税の考え方
・結局どれを選べばいいのか?
自費出版のいろいろな呼び方
出版したいと思ってインターネットなどで調べていると、自費出版、リトルプレスやzine(ジン)、セルフ出版に個人出版、etc.…
たくさんの単語が出てきて混乱しますね。
いろんな呼び方がありますが、これらはすべて自費出版です。
細かな内容がちょっと違っていたり、まったく同じ内容なのに名前だけが違っていたり、人によって定義が違っていたり、とてもややこしい。
「自費出版」という大きなカテゴリのなかに、名前の付け方を工夫したものや出版社ごとのサービスがいろいろあるだけと考えたほうがよいかもしれません。
金木犀舎の「オーダーメイド出版」も、自費出版の別称です。”その本に最適な方法やデザインで、1冊ごとに丁寧に制作する”意味合いを「オーダーメイド」という言葉で表しています。
商業出版と自費出版は「費用を負担する人」が違う
対して、商業出版は自費出版とは明確な違いがあります。
自費出版は著者が費用を負担しますが、商業出版は出版社が費用を負担するのです。
本を出したいと思っている人(著者)は、費用を出版社に出してもらえる商業出版を狙うことがほとんどですが、当然ながら、出版社が費用を出すためには「本が売れて、利益が出る」ことが前提になります。
著者が有名人ですでにたくさんのファンがいるなど、売れることがわかっている場合はすんなり商業出版できますが、そうでない場合にはハードルは高く、もしも商業出版できたとしても、自分の思ったとおりの内容にならない(出版社の主張する内容や表現に書き換える必要がある)ことも多々あります。
しかしやはり、商業出版の場合は出版社側も売るためにちゃんと宣伝してくれますし、大手の出版社で出版したとなると箔もつきます。商業出版するメリットは大きいでしょう。
その他のわかりづらい出版方式
「費用を出版社が出す」商業出版か「費用を著者が出す」自費出版の2択では、どちらも難しい…という場合もあります。
例えば、「社会に問いかけるべき内容で、出版社としても世に出してあげたいけれど、利益が出るほど売れるとは思えない」場合。著者にある程度買い取ってもらったり、印刷費など多少の費用を著者に負担してもらったりすれば出版できます。これは商業出版とも自費出版とも言えません。
例えば、「著者が自費出版した本がとてもよくできていて、内容に新規性があり、出版社の理念とも一致している」場合。出版社が流通に関する諸費用を負担して販売したりもします。これも前者と同様、商業出版、自費出版のどちらでもありません。
それぞれ印税率などで負担を調整しますが、そういう場合は共同出版とか、出版社によって違った呼び方をします。
とにかく出版の方式にはいろいろなパターンがあって、わかりづらいというのが正直なところです。
印税の考えかた
商品(本)は、出版費用を出した人のものですから、商業出版の場合は出版社のもの、自費出版の場合は著者のものになるという考え方が基本になります。
商業出版で売れた本の利益は出版社に入り、そのなかから印税として数%(通常10%以下)が著者に入ります。
自費出版では、そもそも本は著者のものなので、著者が自分で販売した利益はすべて著者のものです。
ただし、書店やインターネットでの販売で出版社の流通を利用した場合は、手数料が必要になります。販売利益から手数料を引いた金額を著者に渡すわけですが、本来ならこれは「印税」とは呼びません。
「販売した本の利益を分配する」イメージで、名目として「印税」という言葉を使っていると考えればよいかと思います。
ですから、自費出版で支払われる印税は商業出版よりずいぶん高く、20〜70%(出版形態や販売方法、出版社などにより異なる。出版形態で印税率が高いのは電子出版)が著者に入ります。出版社によっては印税70%と表記しておいて、そこから手数料を請求する場合もありますので、数字だけで鵜呑みにしないで細かな部分まで確認しましょう。
結局どれを選べばいいのか?
商業出版のお誘いがあるなら、一度は商業出版してみてもいいでしょう。費用負担のリスクがありませんし、全国の書店で販売されるのは夢でもあります。
ただし、前述のとおり、商業出版では自分の思いどおりの本にすることはなかなかできないことを覚えておいたほうがよいかもしれません。
また、この時代に印税で儲けるのは至難の業です。それだけで食べていける人はほとんどいません。
自費出版する費用があるのであれば、思いどおりの本が作れる可能性が高いのでオススメです。内容がおもしろく、品質がよければ、書店やインターネットでの販売もできます。現在、書店に並んでいる本のなかにもかなりの確率で自費出版物があると言われています。
もしも自分で販売するチャネルがあるなら、商業出版より自費出版のほうが利益は出ます。
例えば、講演会やセミナーで全国をまわっている人気講師が自費出版し、会場で販売して3年間で1万部を売り上げた…というような話はよく聞きます。自分で販売しているのですから、すべて自分の収入です。これだけ売れるとかなりの収入源になります。
自費出版、商業出版、どちらもいい面もあり、悪い面もあります。
これは私見になりますが、いちばん大切なのは、信頼できる出版社や編集者と納得のできる本づくりをすることではないでしょうか。