<サンパギータFile.1> けいちゃんの場合
新しいステージへ(前回のつづき)
●私らしく生きる
最近、すっかりハマってしまったことがあります。
それは宝塚歌劇です。知人に1度連れていってもらってから夢中になりました。
特にお気に入りは、花組のトップスター柚香光(ゆずかれい)。とてもかっこいいです。
宝塚の存在は知っていましたが、こんなにハマってしまうとは思ってもみませんでした。
家の中に宝塚の写真などを置いているコーナーがあるくらいです。
どこに行くにも手帳に写真を挟んで持ち歩いています。
これまで、何かがほしいと言ったことはなかったし、ハマったことがなかったので、こんな私を見て夫は嬉しいらしく、一緒に見にいってくれたり、手に入らなかったチケットがインターネットで高額で売られているのを見つけて買ってくれたりします。
夫とは小さな喧嘩はありますが、大きな喧嘩はありません。
冷蔵庫に置いていたものを誰が食べたの、自分が食べようと思っていたのに、など些細なことです。
私はあまり口うるさくないし、思っていることがあっても、お互い冷静になってから言うようにしています。
頭に血がのぼるとわかり合えることも、わからなくなってしまうからです。
夫はいつも私のことを能天気だ、あまり何事も気にしていないみたいだと言います。
でも本当は気にしています。
例えば、夫が子どもに怒っているときでも、私は何も言いません。
夫はなんで黙っているんだと言いますが、一緒に子どもに怒っても同じことだと思うから黙っているのです。
これまで、自分のことを話してきましたが、改めて感じるのは、夫と出会ってよかったです。
とてもよかったと思います。
夫のパチンコ趣味はだめだなと思いますが、大きい子どもだと思っていると、気にならなくなります。
これからの人生、またいろんなことが起こると思いますが、母の「いつでも笑顔で」という教えを忘れないように進んでいきたいと思います。
自分はどこへ向かっているのかと言われると、自分もわかりませんし、大丈夫かな、できるかな、と不安はありますが、自分のできることはやりたいと思います。
<サンパギータFile.1> けいちゃんの場合 了

奈良雅美(なら・まさみ)
小学生のころから「女の子/男の子らしさ」の社会的規範に違和感があり、先生や周りの大人に反発してきた。10代半ばのころ、男女雇用機会均等法が成立するなど、女性の人権問題について社会的に議論されるようになっていたが、自身としてはフェミニズムやジェンダー問題については敢えて顔を背けていた。高校時代に国際協力に関心をもち国際関係論の勉強を始め、神戸大学大学院で、環境、文化、人権の問題に取り組む中で、再びジェンダーについて考えるようになった。
大学院修了後、2004年より特定非営利活動法人アジア女性自立プロジェクトの活動に参加。途上国の女性の就業支援、日本国内の外国人女性支援などに取り組む中で、日本に住むフィリピン女性たちに出会う。社会一般の彼女たちに対する一様なイメージと違い、日々の生活の中で悩んだり喜んだりと、それぞれ多様な「ライフ」を生きていると感じ、彼女たちの語りを聴き、残したいと思うようになる。移住女性や途上国の女性の人権の問題について、より多くの人に知って欲しいと考え、現在、ジェンダー問題、外国人や女性の人権などをテーマに全国で講演も行っている。