File.5-10 私の感じた日本とフィリピンの違い

サンパギータ 日本のフィリピン女性たち(奈良雅美)

サンパギータ 日本のフィリピン女性たち(奈良雅美)

 

<サンパギータFile.5>コラゾンさんの場合

私の感じた日本とフィリピンの違い

 

いいところは、日本人はややこしくない。複雑ではないし、しつこくない。男性も女性もそうかもしれない。
前のことは前のこと、今は今と切り替える。フィリピン人は前のことを引きずる。そういうイメージです。
日本人は優しい。無理なことは言わないですね。

 

日本で20年以上暮らしてきて、辛いこともあったけれど、日本には本当に感謝の気持ちが大きい。フィリピンは愛している、私の国。次は日本。私の人生の半分は日本。素晴らしい国。よくないところもあるけれど、それはどこも同じ。私みたいなケースはあまりないと思うけれど、たぶん仕方がない。

 

日本で暮らしたことはすごい勉強になった。日本は時間に厳しいので自分も厳しくなった。昔はフィリピンタイムだったけれど、今はジャパニーズタイム。マナー、エチケットもね。フィリピンはマナーがちょっとよくないところがある。

外にある時計

 

フィリピンの男性と付き合った経験は1回しかないので、比べられないけれど、日本の男性は飽き性やなと思う。
日本の男性はやっぱり仕事が一番。フィリピンは情熱的な国だから、フィリピン人は家族のため、好きな人のために仕事を頑張ります。日本人男性はまず自分のこと、次に仕事、その次が家族。仕事を家族のために頑張っていると言うけれど、私から見ると仕事が2番目。家族を大事に思っている人が多いなら、私の仕事は存在しないはず。
私、たまに思う。何でみんな早く帰らないのかなって。仕事帰りに飲みにいったりしてね。帰りたくないのかな。早く奥さんとか子どもに会いたくないのかな。まあ、それが私の仕事になるんだけどね。文化の違いかな。私は日本の男性についてはそれだけ思う。でもどっちが悪いかわからないね。フィリピンでは、奥さんは夫が早く帰りたくなるような気持ちにさせなければならないと言われます。

仕事帰りの男性

私はそんな日本人男性としか出会っていないんですよね。そういう仕事やから。真面目な人とは出会っていない。よく人から聞くのは、結婚したら、奥さんのことはパートナーではなくお母さんとしか思ってない、ということ。フィリピンの女性は、夫から女としてみられないのは寂しい。私はそういう立場はいや。フィリピンの男性はいつまでも奥さんを抱きたい。もちろん浮気する人はいるけれど。女として見ていない人は少ない。フィリピンは、ワイフ/パートナーという考え方。日本人男性は奥さんを「お母さん」のように思っている人が多い。私はいややな。

 

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<話を聞いてまとめた人>奈良雅美プロフィール写真
奈良雅美(なら・まさみ)
特定非営利活動法人アジア女性自立プロジェクト代表理事。関西学院大学非常勤講師。ときどきジャズシンガー。
小学生のころから「女の子/男の子らしさ」の社会的規範に違和感があり、先生や周りの大人に反発してきた。10代半ばのころ、男女雇用機会均等法が成立するなど、女性の人権問題について社会的に議論されるようになっていたが、自身としてはフェミニズムやジェンダー問題については敢えて顔を背けていた。高校時代に国際協力に関心をもち国際関係論の勉強を始め、神戸大学大学院で、環境、文化、人権の問題に取り組む中で、再びジェンダーについて考えるようになった。
 大学院修了後、2004年より特定非営利活動法人アジア女性自立プロジェクトの活動に参加。途上国の女性の就業支援、日本国内の外国人女性支援などに取り組む中で、日本に住むフィリピン女性たちに出会う。社会一般の彼女たちに対する一様なイメージと違い、日々の生活の中で悩んだり喜んだりと、それぞれ多様な「ライフ」を生きていると感じ、彼女たちの語りを聴き、残したいと思うようになる。移住女性や途上国の女性の人権の問題について、より多くの人に知って欲しいと考え、現在、ジェンダー問題、外国人や女性の人権などをテーマに全国で講演も行っている。