サンパギータ 日本のフィリピン女性たち(8)

サンパギータ 日本のフィリピン女性たち(奈良雅美)

サンパギータ 日本のフィリピン女性たち(奈良雅美)

 

vol.1 けいちゃん

2.私の仕事〜再び社会とつながる

 

●実家への仕送りの問題

 

日本人と結婚しているフィリピン女性から耳にするさまざまな話の中で、私にとっては首を傾げるような
問題があります。

彼女たちの中には、自分がフィリピンの家族へ仕送りをするために働くという人が少なくありません。
たまの仕送りなら構わないと思うのですが、頻繁に、あるいは定期的に仕送りをする人が多いのです。
ところが、フィリピン国内で結婚した場合は、実家に仕送りをすることは一般的ではありません。
結婚して外国に住んでいるから仕送りをする、というのは、私にはどうも違和感があります。
結婚したらまずは自分の家族のことを優先すべきだと私は考えています。

 

きょうだいの子どもの学費まで支払うとか、親族が病気になったらその治療費を支払うなどということを聞いたり
しますが、そこまで負担する必要はないのではと思います。
彼女たちは「外国に住んでいるのだから自分がそういった費用を支払わなければならない」と思い込んでいるの
でしょう。
頻繁な仕送りは実家の家族を甘やかし、金銭的に依存させることになると思います。

 

実際のところ、私が受けるフィリピン女性からの相談には、こういったお金に絡む内容が多いのです。
「自分は働いているのに夫がお金をくれない」、「フィリピンの家族にお金が必要なのに欲しいと言っても日本人の夫はくれない」などと訴えてきます。
フィリピンの家族にも事情はあるでしょうが、夫にしてみれば毎回なぜそれほど送金しなければいけないのか疑問に思うのも当然でしょう。
自分たち日本の家族もお金は必要なのだから。

妻は、フィリピンの家族が困窮しており送金しなければいけないということを丁寧に説明できず、そこから喧嘩に
なることも多いようです。

 

これは私が心配している問題の1つです。

 

<続く>


<奈良雅美プロフィール>奈良雅美プロフィール写真
特定非営利活動法人アジア女性自立プロジェクト代表理事。関西学院大学非常勤講師。

小学生のころから「女の子/男の子らしさ」の社会的規範に違和感があり、先生や周りの大人に反発してきた。10代半ばのころ、男女雇用機会均等法が成立するなど、女性の人権問題について社会的に議論されるようになっていたが、自身としてはフェミニズムやジェンダー問題については敢えて顔を背けていた。高校時代に国際協力に関心をもち国際関係論の勉強を始め、神戸大学大学院で、環境、文化、人権の問題に取り組む中で、再びジェンダーについて考えるようになった。
 大学院修了後、2004年より特定非営利活動法人アジア女性自立プロジェクトの活動に参加。途上国の女性の就業支援、日本国内の外国人女性支援などに取り組む中で、日本に住むフィリピン女性たちに出会う。社会一般の彼女たちに対する一様なイメージと違い、日々の生活の中で悩んだり喜んだりと、それぞれ多様な「ライフ」を生きていると感じ、彼女たちの語りを聴き、残したいと思うようになる。移住女性や途上国の女性の人権の問題について、より多くの人に知って欲しいと考え、現在、ジェンダー問題、外国人や女性の人権などをテーマに全国で講演も行っている。